奈良県立医科大学輸血部

業務紹介

血液製剤管理と種類

赤血球製剤、新鮮凍結血漿、血漿分画製剤等の血液製剤の管理は、血液製剤温度管理システムを用いて適正な温度管理の下、保管しています。

 

1.輸血用血液製剤の種類と適応

主な血液製剤の種類 使用目的 有効期限 保管方法
赤血球製剤 照射赤血球液-LR 血中赤血球不足又はその機能廃絶に適する。 採血後21日間 2~6℃
照射洗浄赤血球液-LR 貧血症又は血漿成分などによる副作用を避ける場合の輸血に用いる。 製造後48時間
照射解凍赤血球液-LR 稀な血液型の輸血時に用いる。 製造後4日間
照射合成血液-LR ABO血液型不適合による新生児溶血性疾患に用いる。 製造後48時間
血漿製剤 新鮮凍結血漿-LR 血液凝固因子の補充。 採血後1年間 -20℃以下
血小板製剤 照射濃厚血小板-LR 止血・出血防止。血小板減少症を伴う疾患に適応。 採血後4日間 20~24℃
水平振とう
照射濃厚血小板HLA-LR 上記の他に、HLA抗体保有のため通常の濃厚血小板では効果がみられない場合に適応。

血液製剤管理と種類

赤血球液の適正使用

赤血球補充の第一義的な目的は、組織や臓器へ十分な酸素を供給することにあるが、循環血液量を維持するという目的もある。

血小板濃厚液の適正使用

血小板輸血は、血小板成分を補充することにより止血を図り(治療的投与)、又は出血を防止すること(予防的投与)を目的とする。

新鮮凍結血漿の適正使用

凝固因子の欠乏による病態の改善を目的に行う。特に、凝固因子を補充することにより、止血の促進効果(治療的投与)をもたらすことにある。

(2019年3月「血液製剤の使用指針(改定版)」より引用)

 

2.血漿分画製剤の種類と適応

現在輸血部では、下記の血漿分画製剤を取り扱っています。

製剤種 製剤 適応
アルブミン製剤 等張アルブミン製剤 出血性ショック・敗血症・人工心肺を使用する心臓手術など
高張アルブミン製剤 出血性ショック・敗血症・人工心肺を使用する心臓手術など
ヒト免疫グロブリン製剤 免疫グロブリン製剤 低・無ガンマグロブリン血症、重症感染症、自己免疫疾患への大量療法
抗破傷風グロブリン製剤 破傷風予防・治療
抗HBsグロブリン製剤 B型肝炎発症予防
抗Dグロブリン製剤 Rh(D)不適合妊娠
ベタフェロン製剤 多発性硬化症
アンチトロンビン製剤 アンチトロンビン製剤 AT-Ⅲ欠乏・欠損に基づく血栓形成傾向
組織接着剤 組織接着剤 組織の接着・閉鎖
ハプトグロビン製剤 ハプトグロビン製剤 溶血反応に伴うヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿症の治療
凝固因子製剤 第Ⅷ因子製剤 第Ⅷ因子欠乏、フォンビルブランド因子欠乏による出血傾向抑制
第Ⅸ因子製剤 第Ⅸ因子欠乏による出血傾向抑制
第Ⅸ因子複合体製剤 第Ⅱ因子、第Ⅶ因子、(第Ⅸ因子)、第Ⅹ因子欠乏による出血傾向の抑制
第XIII因子製剤 第XIII因子欠乏・低下による疾病
抗体迂回活性複合体製剤 第Ⅷ因子、第Ⅸ因子に対するインヒビターを保有する血友病の出血傾向抑制
第Ⅶa因子製剤
フィブリノゲン製剤 フィブリノゲン製剤 先天性無・低フィブリノゲン血症の出血傾向抑制

血液製剤管理と種類

 

3.輸血用血液製剤および血漿分画製剤の輸血・投与に関して

輸血の説明と同意書

当院で治療を受けられる患者さんで治療経過中に、輸血用血液製剤(赤血球製剤、新鮮凍結血漿製剤、血小板製剤)やヒト由来血漿分画製剤の輸血を行う必要が生じる可能性がある方は、「輸血同意書」「血漿分画製剤同意書」に署名・押印していただくことになりました。輸血・投与に伴う有効性とリスク等に関し、医師の説明を十分に理解されましたら同意書にご署名をお願いしています。

保管検体

血液製剤の輸血や投与による感染症が疑われた場合には、血液製剤と感染症との因果関係を明らかにする為に、患者さんの輸血・投与前の状態を確認する必要があります。そのために、当院では「保管検体」として輸血・投与前の血液を採血し凍結保存(約2年間)しています。感染症発症に血液製剤との因果関係を確認した場合には、生物由来製品感染等被害救済制度を受けることも出来ます。

◇ 参考 生物由来製品と特定生物由来製品

人または動物の細胞・組織等に由来する原材料を用いて製造される生物由来製品は、原材料の汚染に由来する感染リスク等に注意が必要な場合があります。 生物由来製品とは、人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原材料として製造される医薬品・医療機器等のうち、保険衛生上特別の注意を有するもので、遺伝子組換え製剤等を含みます。 特定生物由来製品とは、生物由来製品のうち、市販後において保険衛生上の危害の発生または拡大を防止するための措置が必要なもので、ヒト血漿分画製剤、輸血用血液製剤等をさします。

◇ 参考 生物由来製品感染等被害救済制度について

生物由来製品である血漿分画製剤を適正に使用したにもかかわらず、その製剤が原因で感染症にかかり、入院治療が必要な疾病や障害等の健康被害を受けた患者さんの救済を図る為、医療費・医療手当・障害年金などの給付を行う生物由来製品感染等被害救済制度があります。

輸血後感染症検査

患者さんの輸血後の健康管理を目的に、厚生労働省は輸血後感染症検査の実施を推奨しています。当輸血部では、輸血用血液製剤を輸血された患者さんに関して、「輸血前・後感染症検査のお知らせ」を配布することで、検査の実施時期をお知らせしています。

製剤による副作用

輸血部では、臨床から副作用発生に関する報告あるいは今後の対応等についての問い合わせがあった場合、副作用の詳細を確認し、場合によっては赤十字血液センターと協力し原因の調査を行います。また、次回の輸血時の副作用の防止・軽減に役立つよう、使用する血液製剤や輸血前の薬剤投与等について情報提供を行います。

遡及調査

輸血用血液製剤において、一旦検査に合格して献血した方が、その後の献血時の感染症検査で陽性を呈する場合があります。万一、患者さんに輸血した血液がそのような献血者からの血液であると判明した場合には、患者さんに連絡させていただき、遡及調査として感染症の検査をお願いする場合があります。(その結果は、日本赤十字血液センターへ報告され、最終的には厚生労働省へ報告されます。)

輸血歴情報の管理

輸血用血液製剤の輸血や血漿分画製剤の投与が実施された場合の履歴情報(血液製剤の製品名、製造番号、輸血日等)は、法律により輸血後20年間保管することが義務付けられています。これは、万一、輸血による感染の可能性が考えられた場合、輸血・投与された患者さんに対して迅速かつ適切に対処するためです。